今週の相談

キャブレターを自分でオーバーホールしたい

N・Uさん ホンダ CB400SFバージョンS
しばらく動かさなかったのでエンジンがかからなくなってしまいました。ショップに相談すると、キャブレターのオーバーホールが必要で、10万円くらいかかるとのことで驚いています。予算的に何とか自分でオーバーホールしたいのですが可能でしょうか?
安藤先生の答え

サービスマニュアルを手に入れよう

バイクには、その車両の整備データや整備方法が記載された、
「サービスマニュアル」という本がメーカーから発売されています。

1冊4,000円前後しますが、今回のキャブレターのオーバーホールに限らず、 ありとあらゆる整備に役立ちます。

もちろん一般ユーザーでも購入可能。

最近はインターネットでも購入できますから、
ぜひ手に入れることをお勧めします。

ただ、「CB400SFバージョンS」は10年以上前のモデルですから、 サービスマニュアルが手に入らないかもしれません。

中古でも手に入らない場合は、
「バージョンS」にこだわる必要はありません。


キャブレター時代の「CB400SF」のサービスマニュアルなら、
十分整備の参考になります。

必要な工具類については最後に触れようと思いますが、一般的な工具に加えて、
通路やジェット類の詰まりを取るためにコンプレッサーの圧縮空気が半ば必須になります。

キャブレタークリーナーやパーツクリーナーも必要でしょう。

すべて1から揃えるとなると、
5万円+アルファ程度の出費になります。


一度に全部バラさない

ここでは、カワサキ・ゼファーの写真を例に話を進めていきます。

手順をひとつひとつ追って行くととんでもない文章量になってしまいますから、
各場面での注意点とチェックポイントをかいつまんで説明します。

基本的な手順やパーツ構成はサービスマニュアルを見ればわかりますが、 サービスマニュアルが手に入らなかった場合は、バラすキャブレターそのものが教材になります。

「CB400SF」の場合はキャブレターが4個つながっていますから、一度にすべてをバラさず、パーツの組み方が分からなくなったときに参考にできるよう、2個ずつ作業を進めるといいでしょう。

さて、まずは車体からキャブレターを外します。

シートと燃料タンクを外し、
キャブレターと前後のゴム製ジョイントとを止めているバンドを緩めます。

さらに、エアクリーナーボックスを固定しているボルトを外し、
ボックスを後方にずらしてからキャブレターを抜き取ります。

次にアクセルワイヤーおよびチョーク(スターター)ワイヤーのクランプを外し、
各ワイヤー先端のタイコを外すと、キャブレターが単体で車体から外せます。

文章にすると簡単ですが、
実際にはキャブレターの前後スペースに余裕が無く苦労することでしょう。

新車から10年以上経過して、
ゴム製ジョイントも硬化が進んでいるのでなおさらです。

ゴム製ジョイントを傷めないように慎重に、
かつ大胆な作業が必要です。


穴という穴にエアを通す

私の場合、キャブレターを全バラにする場合は、
上から始めます。

トップカバーを取り外して、 バキュームピストンを抜き取ります。

抜き取ったら、上部にあるゴム製の薄い膜「ダイヤフラム」に柔軟性が残っているか、 軽く引っ張って確認します。

穴が開いていたり、極端にシワが多い場合は交換が必要です。

ダイヤフラムを軽く引っ張りながら空にかざすと、 小さな穴も見つけることができるので試してみてください。

次にキャブレターを逆さにして、
フロートカバーを外します。

写真左側はフロートカバーを外しただけの状態。

左右に2つある白い丸い部品がフロートで、 その中央先端部分にフロートバルブが取り付けられています。

その下に突き出しているのがメインジェットで、その奥にメインジェットホルダー、 ニードルジェットが縦につながっています。


メインジェット左の穴の奥に、
パイロット(スロー)ジェットが取り付けられています。

メインジェット真下の穴はスタータージェットで、
このキャブレターの場合は取り外しができません。

さらにその下、
フロート室から外れた2本のプラスビスの間にあるのがパイロットスクリューです。

写真右側はそこからフロートやジェット類を取り外したところ。

いちばん上にある大きな穴がフロートバルブが入っていた穴で、
ここからフロート室にガソリンが流れ込んで来ます。

この写真は、フロート室から取り外したパーツ。

左はフロート、フロートを止めているピン、フロートバルブ。
その右側上段がメインジェットホルダーとメインジェット。
下段がパイロットジェットとパイロットスクリューです。


これらジェット類はすべて真鍮製なので、着脱時に適正サイズの工具を正しく使わないと簡単に溝や角をナメてしまうので注意が必要です。

すべてのパーツを取り外したら、各ジェット類とキャブレター本体側のすべての穴にコンプレッサーの圧縮エアを通して詰まりを取り除きます。

スラッジなどで穴が詰まっている場合は、 キャブレタークリーナーやパーツクリーナーを使って溶かし落とします。

ジェットの素材が柔らかい真鍮なので、 ピンなどで穴をつつくと傷がついて穴が広がる可能性があります。

詰まり汚れは、
クリーナーで溶かして落とすのが基本と考えてください。

この写真は、キャブレター単体の状態から各ジェット類を取り外すのに使用した工具です。

穴の奥に取り付けられているパイロットジェットを外すために、 先端の幅が狭いマイナスドライバー(中央)が必要でした。

右端のポンチは、 フロートを止めているピンを外すのに使いました。

各部を掃除するには、
これにコンプレッサーとエアガンが必要になります。

コンプレッサーが使えない場合はパーツクリーナーの噴射力で代用もできますが、
圧縮エアを使った方が確実な仕事ができます。

このように、キャブレターの構造が理解できていて、
必要な工具が揃っていれば、オーバーホールはそう難しい作業ではありません。

しばらくエンジンをかけていなかったということから、
ジェット類の固着や詰まりの可能性が十分考えられます。

先にも触れたように、適正な工具を正しく使ってひとつひとつ確実に進めていかないと、
最悪キャブレター交換ということにもなりかねません。注意してください。

今回の処方箋
サービスマニュアルを手に入れよう
構造を知れば作業は難しくない
繊細な部分なので無理は禁物
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回答者
安藤佳正

安藤佳正

プロフィール

元MFJロードレース国内A級 国家三級二輪整備士

月刊「オートバイ」を中心に20年以上のキャリアを持つバイクジャーナリスト。
特にメカニズムやメンテナンス、チューニングを得意分野とし、それに付随す るパーツや工具、ケミカルにも精通。 パーソナルHP「and-power.com」を運営。