29.寒い季節、暖機運転は必要ですか?
12月になって毎日寒いですが、走り出す前に暖機運転は必要でしょうか?いつもエンジンをかけてすぐに走り出すのですが…。(たーさん)
暖機運転とは「Warm Up」、つまりスポーツの準備運動で体を温めるように、スタート前にエンジンを温めることを言います。 なぜスタート前にエンジンを温める必要があるのでしょうか。
エンジンは通常、数100度という高温で正常に動くよう設計されています。常温に冷えているエンジンと運転中のエンジンの温度差は、300度を超えます。 この温度差によってエンジンの各部品は収縮します。温度が上がれば部品は膨張し、冷えれば縮むのです。この各部品が常温レベルまで冷えた状態でエンジンに負荷をかけると、縮んだエンジンや部品を傷つけることになってしまいます。このためエンジンのWarm Upが必要とまるのです。
またこれまではタイミングチェーンの自動テンショナーのためにWarm Upが必要でした。 12月6日号で、タイミングベルトについてお話しましたが、昔はゴム製のタイミングベルトではなく、金属製のタイミングチェーンを装備した自動車が一般的でした。金属製のタイミングチェーンの張り具合を自動調整するテンショナーは、エンジンが始動して温まってきてから正常に働きます。
このタイミングチェーンのためにもWarm Upが必要だったのです。 これらの理由からエンジンは水温計の針が動くまで3〜5分アイドリングし、十分に温めてからスタートしましょうという、暖機運転の常識ができたのです。
かつては暖機運転をしたエンジンとしないエンジンでは寿命が違うとまで言われました。しかし現在の車でもこの常識はあてはまるのでしょうか?
最近の日本車は、エンジンや部品に使われている金属材質の耐磨耗性が向上し、さらにエンジンオイルの性能も飛躍的に向上しました。もう多少の温度差では金属が傷んでしまう心配もありませんし、オイルが凍結することもありません。そのため車の取扱説明書には暖機運転を必ずするようには書かれていません。暖機運転について全く書かれていない説明書もあります。(皆さんも説明書を見てみましょう)
多くの方が乗っておられる現在の日本車は、神経質になって暖機運転する必要はないと言えるでしょう。エンジンをかけてすぐスタートしても問題は起こらないということです。 暖機運転が必要なのは、1980年代以前の日本車か、一部の外車と考えていいように思います。(私の意見です)
むしろ現在の日本車に必要なのは暖機運転ではなく、暖気走行であると考えます。
暖機運転はエンジンを温めるために行いますが、暖機運転ではWarm Upできない場所があります。ミッションです。ミッションオイルは暖機運転では、温度を上げることができません。暖機運転をしたことで安心してスタートし、いきなりの負荷をかけると、ミッションを傷める心配があります。
エンジンをかけてスタートをした後、エンジンだけでなく各部が温まるまで負荷をかけない運転をするのが「暖機走行」です。
マフラーの触媒が正常に機能するのは400度以上であると言われています。 低温で無理な負荷をかけるとうまく機能しないだけでなく、触媒の目詰まりの原因となり、エンジンが吹け上がらなくなるなどの症状が出ることがあります。最悪の場合、触媒交換となりかねません。
ミッションも温まった状態で正常に動きます。低温で負荷をかけるのは、よくありません。
現在の車には暖機運転は必要ありませんが、各部品が暖まるまで車にやさしい暖機走行をおすすめします。
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